1 半導体における新現象と物性物理

A 共鳴ブリルアン散乱

 私の博士研究論文テーマ(指導教官: 現大阪大学名誉教授濱口智尋)であり、II-VI族、III-V族およびIII-VI族化合物半導体における共鳴ブリルアン散乱に関する、理論的・実験的研究を進めた。共鳴現象は、下記図1に示すように、光波長がバンドギャップに近づくにつれて、散乱断面積が急峻(共鳴的)に変化する現象である。散乱過程におけるダンピングの重要性や、変調分光スペクトロスコピーとのアナロジー、間接ギャップにおける共鳴ブリルアン現象の観測等が、主たる研究成果である。


図1.ZnSeにおける共鳴ブリルアン散乱断面積の波長分散
   (From S. Adachi & C. Hamaguchi, Phys. Rev. B 19, p.938, 1979)



B バリスティック(弾道)輸送現象

 “弾道輸送”は米国コーネル大のL.F.Eastman教授が最初の提唱者であり、電子が通常の等速運動とは異なる、等加速度運動、すなわち大陸間弾道ミサイルのごとく運動する輸送現象のことである。n+p-n+構造のGaAs弾道輸送層(p-)を有する試料を分子線ビームエピタキシャル成長で作製し、これの輸送現象を測定した。下図2はその測定例であり、詳しい解析より弾道輸送現象が起こることを実証した。


図2.GaAsにおける弾道輸送現象
   (From S.Adachi et al., IEEE Electron Dev. Lett. EDL-3, p.409, 1982)



C 半導体の物性物理

 第一原理の簡単な手法で様々な半導体混晶の物性値を予測し、これらの妥当性を検討した。対象とした物性値は、バンドギャップや有効質量、屈折率、熱導電率など多岐にわたる。一例として、GaAsの電気光学定数分散実験データを、私の構築した理論モデルでフィットした結果を図3に示す。


図3.GaAsの電気光学定数分散の理論フィット
   (From S. Adachi, J. Appl. Phys. 72, p.3702, 1992)

以上


研究テーマの扉に戻る


安達定雄のホームページ扉に戻る