A MDF理論
MDF (Model Dielectric Function) 理論は、現在の研究室テーマの主幹をなす理論であり、これをベースにほとんどの研究が展開されているといっても過言ではない。この理論は、私がNTT電気通信研究所退社の直前に構築したものであり、今日見られる透明から不透明領域までの広いスペクトルを説明できる光学分散理論は、このMDF理論の研究が発端になっている。その後、海外の多くの研究者からもMDF理論の改訂版が発表され、今日に至っている。下図1は、MDF理論の最初の論文から引用した、GaPの実験データとのフィットを比較した記念すべき図である。
図1.MDF理論によるGaP誘電率のフィット
(From S. Adachi, Phys. Rev. B 35, p.7454, 1987)
B エリプソメータ測定
本研究室の理論的支柱がMDF理論ならば、実験的支柱はエリプソ測定と言える。これまで、SiやGaAs、InP、InSb、ZnSe、c-ZnSやPbTeなどの等方的結晶はもちろん、GaNやCdS、CdSeなどの異方性結晶、あるいはアモルファス半導体にも適用した。また、自然酸化膜に関する知見や表面クリーニング、イオン注入試料のダメージなど、プロセスモニターとしても広く適用が可能であることを実証した。下図2は、最近測定した金属的な試料のTiNでのエリプソ測定データとMDFフィットを表した図であり、実験と理論とのよい一致が見られている。なお、TiNは半導体産業だけではなく、金色カラーで硬度も極めて硬いことから、装飾・ハードコーティング材料として期待が持たれている。
以上
図2.TiNのエリプソ測定データとMDFフィット曲線
(From S. Adachi & M. Takahashi, J. Appl. Phys. 87, p.1264, 2000)