A　湯けむりシリーズ

[草津温泉公式サイト]
[草津セミナーハウス]

　『草津温泉』の湯はpHが約2の強い酸性である。公私共に貧乏な私ども家族一同は、一人一泊千何百円で済む安宿（草津セミナーハウス：正式には関東地区国立大学共同利用施設だから宿とは言えない）に滞在し、そして私は湯舟につかりながらふと考えた。 「塩酸などの高価な薬品を買うのも、国立大学ではままならぬ。草津の湯なら、金銭的な遠慮は全くいらない。使い放題だ。これで何とか学会発表などができないものか」と。 早速、裸で（当たり前だが）湯舟の湯をポリタンクにくみ、大学研究室に持ち帰った。その後、実験したがなかなかうまくいかない。官舎のオンボロ風呂につかりながら考えた。 「どうせ実験でうまくいかない草津の湯なら、お慰みでこのオンボロ風呂に入れて、草津の湯加減をもう一度桐生で味わってみるとするか。いや待てよ。強い酸性の湯が災いして、ただでさえボロボロの湯釜、一気に腐食が進み、大学管理係の職員に大目玉を食らうぞ。捨てるに捨てられぬ草津の湯。こまったものだ。」 「いやいや待て。昔から草津の湯は"医者でも治せぬ病を治す"と言うではないか。草津の湯と、医者に相性のいいオキシドール（過酸化水素水のことで、傷口の消毒に不可欠）でも混ぜ、最後のあがきの実験をやってみるか。」 翌日、実際に実験室でオキシドールを混ぜた草津の湯でGaAsのエッチングを試みた。草津の湯だけではウンともスンとも言わなかったGaAs結晶が、オキシドールを混ぜることで一気にエッチングされた。驚きだ。早速、英語論文を2編執筆し、投稿した。下図1は、そのうち米国電気化学会で発表した論文の部分コピーである。 草津町長に、「草津温泉を国際的に有名にしたお礼に、めったに泊まれない高級旅館かホテルに一泊無料のご招待」をねだった。しかし、時悪く草津町長選挙の開票直後だったらしく、一学者のたわむれな願いなど、全く聞いてもらえなかった。残念至極。


図1．草津温泉によるGaAsのエッチングの論文
　　　(From S. Adachi, J. Electrochem. Soc. 138, p.3714, 1991)

[峡西都市振興公社（天恵泉）オリジナルサイト]

[玉川温泉オリジナルサイト]

図4．玉川温泉(秋田県)水によるInPの化学エッチング
　　　−第52回応用物理学関係連合講演会予稿集 (3月、2005)−





図5．玉川温泉(秋田県)水によるInPの化学エッチング
　　　(From S. Adachi, Mater. Sci. Eng. B 126, pp. 49-52, 2006)

B　エネルギーバンド構造理論に立脚した光学分散理論

　（尾崎准教授の研究テーマ）　エネルギーバンド構造理論に立脚して、半導体材料の光学分散理論を検討している。詳細は近日公開予定。

以上